任意整理における近年の問題点
これまでに任意整理で住宅ローンの滞納を解消できる可能性があることを紹介しましたが、今回は任意整理の課題について書きます。
任意整理の和解基準の大原則は、利息制限法で引き直した残元金を、将来利息免除で分割、です。
この暗黙のルールに従って、これまでは貸金業者と司法書士や弁護士の間で和解交渉がおこなわれてきました。
しかし、近年は過払い金請求の増加に伴い、貸金業者の財務状況が悪化し、その影響から一部のサラ金業者の中には、上記の基準に従わないところも出てきました。
経過利息(最後の取引日から和解日までに発生した利息)程度の上乗せであれば、まだ金額的な影響も少ないですが、
一部の業者は将来利息を要求し、なおかつ一括でなかれば和解に応じないという強硬な態度を取るところも出てきました。
ある某サラ金大手は、過払い金を利息を含めて全額要求してくる事務所に対しては、逆に借金が残った場合に将来利息を要求しているようです。
これに対して、過払い金を減額してくれる事務所は、任意整理の際にも従来どおり、将来利息を要求しないで無利息での分割返済で和解しているとのことです。
よって、極論をいえば、借入先にこういった業者が含まれている場合は、過払い金の回収を厳格におこなっていない事務所の方が、任意整理はスムーズにいくといえます。
いずれにせよ、こういった対応をする一部の業者が理由で、今後は任意整理ができないといったケースも出て来ることが予想され、そういった場合は、個人再生に切り替えることもあるかもしれません。
つまり、昔は任意整理できていたケースでも今では任意整理ができないといった事態が発生することもあるわけです。
よって、今後は一昔前であれば、任意整理ができるケースにもかかわらず、やむなく個人再生を選択せざるを得ないというケースが増えると予想されます。
ところで、債務整理の仕事をしているといろいろな債権者と連絡を取ることになりますが、会社によって連絡が取りやすいところとそうでないところがあります。
大手で連絡が取りづらいのは三菱UFJニコスでしょうか。
最近は多少良くなりましたが、数か月前までは電話をしても出ない場合がありました。
ニコス 「はい、三菱UFJニコスです」
私 「お世話になっております。」
ニコス 「お世話になっております。では、会員番号をお願いします」
私 「会員番号は○○○○です」
ニコス 「○○さんの件ですね、ただいま担当が不在なので折り返しさせますがよろしいでしょうか?」
私 「わかりました。どのくらいで連絡頂けますでしょうか?」
ニコス 「そうですね、2~3日中には電話させます」
こんな感じで連絡を待つのですが、1週間経っても連絡がこないことはざらです。
過払い請求ならまだ分かるのですが、こちら側が借金を返済する和解案を送っているのに全然連絡がこないことも珍しくありません。
一度、ニコスの担当者になぜ満足に連絡が取れないかを聞いたところ、債務整理の案件が非常に多くて人員が足りないとのこと。
人手が足りないのは分かりますが、連絡くらいはすぐに取れるようにして欲しいものです。
次は和解書が届かなった話です。
○○さんの任意整理の件でCFJと分割返済で和解しました。
ところで、和解書をどちらが作成するかは債権者によってまちまちで、私が作成することもありますし、会社の事情から債権者が作成した和解書を使う場合もあります。
CFJの場合、今ままで分割返済の和解書は同社が作成し、それに私が記名押印して返送していました。
ところが、○○さんの場合、いつもと違い私が作成することになりました。
CFJ 「では、和解書の作成ですが、先生にお願いしてもよいですか?」
私 「え?別に構いませんけど、いつもは御社が作成した和解書を使っていますが、うちが作成したものでもいいんですか?」
CFJ 「ええ、別に構いませんよ」
私 「そうですか、ならすぐに作成して送っておきます」
○○さんの場合、初回の返済が9月末からになっていました。
このような場合、通常は遅くても支払期日の1週間くらい前には和解書は届いているのですが、今回は前日になってもまだ届きません。
和解書が届かない以上は返済できません。
結局、和解書が届かないまま支払期日が過ぎました・・・。
そして、10月1日。
CFJ 「○○さんの件ですが、9月分の支払いがされていないようですが?」
私 「ええ、でも御社からの和解書がまだ届いていないんですよ」
CFJ 「え!そうなんですか。ちょっと調べてみます・・・そうですね、昨日発送したようです」
私 「そうですか、今日の郵便にはなかったのでおそらく明日には届くと思いますから、届き次第、入金しておきます」
CFJ 「大変申し訳ありませんでした。それでは宜しくお願い致します」
和解書の送付が遅れたのは、いつものようにCFJが作成しなかったからでしょうか。
理由はどうあれ、和解書くらい期日前に余裕をもって送ってきて欲しいものです。
なお、名前が変わっても特に問題はございません。
以下に実例を紹介しておきます。
「名前が変わったのですが債務整理できますか?」
「住所が変わって債権者に教えていないのですが大丈夫ですか?」
この辺はよく聞かれる質問です。
結論から言えば、名前や住所が変わっていても全く問題ありません。
ご相談者から正式に依頼を受けると、受任通知を債権者に送るのですが、ここには通常、依頼者の①住所、②氏名、③生年月日を記載します。
そして、名前が変わっていれば旧姓、住所が変わっていれば旧住所も合わせて記載します。
債権者は氏名、生年月日、住所の3つが合致すれば取引履歴の開示をしてきますが、一つでも合致しないと債権者から問い合わせが来ます。
債権者 「先日、受任通知を送って頂いた○○さんの件ですが、住所の確認をお願いします」
私 「わかりました」
債権者 「そちらから送って頂いた住所には千葉県~略~、となっておりますが、こちらでは該当がないのです。債務者の方からこれ以外の住所は聞いていませんか?」
私 「すぐには分からないのですぐに調べて折り返します」
といった感じです。
名前や住所が借り入れ当初と違っても同一人物であることには変わりありませんので、それが債務整理に影響を与えることは一切ありません。
当たり前のことですが、結構心配されている方が多いので念のため紹介させて頂きました。