『借金が〇〇万円ありますが自己破産できますか?』
といったご相談を受けることがあります。
そこで、どのような場合に自己破産ができるのかが問題となります。
この点については、一律に借金がいくら以上であれば自己破産ができるといった明確な基準はありません。
なぜならば、たとえ借金が1000万円あっても、年収が1億円もある人であれば支払えるからです。
となると、自己破産できるかどうかの基準は何?という話になりますが、この点については
『客観的に借金の支払ができない状態』
であれば自己破産の要件を満たします。
しかし、客観的に支払不能かどうかについてはケースバイケースで判断せざるを得ません。
よって、第三者にも支払不能である場合が明らかな場合はともかくとして、支払不能かどうかが微妙である場合は、最終的には裁判所が自己破産を認めるかどうかを決めます。
ただし、実務上は自己破産をする場合は、ほとんどの方が司法書士や弁護士に依頼をすると思いますので、司法書士等の専門家が客観的に支払不能状態にあると判断すれば自己破産を選択することになります。
なお、支払不能かどうかは、毎月の限られた収入の中で借金を分割で返済していけるかどうかで判断します。
この点、司法書士等が各債権者と個別に交渉して分割返済の和解をしていく任意整理というものがありますが、もし、任意整理で借金を返済できる目途が付くのであれば自己破産を選択することはありません。
よって、自己破産を選択する場合というのは、客観的に支払不能状態にあり、任意整理もできない場合となります。
なお、自己破産は無色であることは条件ではありません。
以下に実例を紹介しておきます。
多重債務者のAさんからの相談。
Aさん 「借金が300万円近くあるんですが・・・」
私 「借入先はどういったところでしょうか?」
~(中略)~
私 「ほとんど低金利や高金利でも短期間の借り入れなので、利息制限法で引直計算をしても、借金の額はそれほど変わらなそうですね」
Aさん 「そうですか・・・」
私 「現在のお仕事は?」
Aさん 「契約社員をしています。月に18万円位です」
私 「そうすると毎月に返済できる金額はおいくらくらいでしょう?」
Aさん 「生活するだけでいっぱいいっぱいなので2~3万円でしょうか」
私 「そうなると自己破産か個人再生になりますが、どちらがご希望ですか?」
Aさん 「できれば一度、リセットしたいので自己破産したいです」
私 「なるほど、わかりました」
Aさん 「ところで、自己破産をするには無職でないといけないのですか?」
私 「いえ、必ずしも無職である必要はありません。客観的に支払不能であれば自己破産の要件は満たします」
「たとえば、毎月50万円の収入があっても、借金がたくさんあって毎月の返済額が収入以上あれば支払不能といえます」
「Aさんの場合、毎月の収入が18万円ですが、ここから家賃や生活費を引くと最大限頑張っても毎月3万円が限界と思います」
「反面、300万円の負債を任意整理で分割返済していくとなれば、最低でも毎月5万円は必要となりますので、現在のAさんは支払不能といえます」
Aさん 「なるほど・・・」
Aさんのように自己破産をする際に定職に就いていると破産が認められないのではと思っている方は少なくありません。
自己破産の要件は「客観的に支払不能に陥っていること」です。
よって、収入があっても借金を返済できるだけの収入がないのであれば支払不能といえ、自己破産を申立る要件は満たします。
ただし、「支払不能=自己破産が認められる」というわけではなく、実際に免責が認められるかどうかは裁判所が総合的に判断をして決めることになります。
また、自己破産とは別に個人再生というものがあります。
これは、裁判所を通して借金を原則的に5分の1にする手続きです。
ただし、個人再生は圧縮した借金を3年かけて返済していく手続きなので、継続して安定した収入がないと利用することができません。
よって、客観的に支払不能であっても、継続して安定した収入がある場合は、自己破産ではなく個人再生を選択することがあります。
言い換えると、支払不能状態で、かつ、安定収入がない場合は自己破産を選択するしかないということになります。
この辺の判断は司法書士等の専門家の意見を参考にして決める必要がありますので、まずは借金の返済に困ったらお近くの司法書士にご相談してみてください。
当事務所も千葉近郊でご来所可能な範囲であれば、多少遠方であっても対応可能ですので、お気軽にご相談ください。