自己破産の誤解と裁判官との面接
これまでにも自己破産のデメリットについて書いてきました。
が、まだまだ誤解されている部分がかなりあると思います。
その代表格の一つに、自己破産をすると選挙権がなくなるのではないか、というものがあります。
これは、何と混同しているかというと成年後見制度ではないかと思われます。
痴呆などの精神障害を患った場合に、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらって、精神障害を患ってしまった方に代わり、後見人が法律行為を代理するのが成年後見制度です。
そして、これまでは成年後見人が付くと、選挙権を失うという運用がなされてきました。
しかし、今年の法改正により、成年被後見人に対して一律に選挙権を剥奪することは憲法違反とされ、被後見人であっても選挙権を失うことはなくなりました。
いずれにせよ、自己破産をしても選挙権は失いませんので、もし、選挙権がなくなるのでは・・・
と誤解されている方がいましたら、その点はご安心ください。
また、自己破産をすると戸籍や住民票に載るのではないかと心配されている方も多いです。
しかし、これも全くのデタラメです。
戸籍や住民票は、自己破産の申し立ての際には提出しますが、だからといって破産した旨が載るわけではありません。
ただし、役所で取れる身分証明書には、破産手続開始決定から免責決定までの数か月間は破産者である旨が記載されます。
ここでいう身分証明書というのは成年後見人になろうとしたときに、自分が破産者ではないことを証明するために、家庭裁判所に提出する必要がありますが、それ以外で目にすることは原則ありません。
よって、運転免許証などの一般的な意味での身分証明書とは意味合いが違いますのでご安心下さい。
なお、自己破産申立後の裁判官との面接はおおむね以下のとおりです。
裁判所によって対応は変わりますが、千葉では司法書士もこの面接に同行するのが普通です。
裁判官 「借入をした理由は?」
債務者 「生活が苦しくて借入れをしてしまいました」
裁判官 「離婚されてますがどういった理由で?」
債務者 「DVと性格の不一致などで・・・」
裁判官 「元夫から養育費はもらっていませんか?」
債務者 「はい、今ではどこにいるかも分かりません」
裁判官 「ご両親は消息不明となっていますが?」
債務者 「はい、両親は私が小さい頃に離婚したのですが、その時に母が出ていき、私が高校生の頃に父も家を出ていってしまいました。今では音信不通です」
裁判官 「そうですか、子供が2人いるようですが、生活できているのですか?」
債務者 「はい、今はアルバイトですが何とかギリギリやっていけています」
裁判官 「今後、数年は借り入れできないと思いますが、また、しばらくすれば借入れができるようになります。そうなった時に再び借入れをしてしまうと同じことの繰り返しですよ」
債務者 「はい、わかっています。借金は2度としないつもりです」
この債務者の方は小さい頃、両親に捨てられ、離婚も経験し、色々と辛い人生を送ってきました。
しかし、今は2人の子供を育てながら必死で生活をしています。
借金がなくなってもすべてが解決するわけではなく、今の収入だと普通に生活をするだけでも大変だと思いますが、子供のためにもなんとか頑張っていって欲しいと思います。
別の方から裁判官との面接後に免責をもらったとの報告を受けました。
いつもは裁判所での面接の際は私も同行するのですが、この方はわけあって同行できなかったためです。
Aさん 「裁判所での面接が終わりました。1月には免責になるみたいです!」
私 「それは良かったですね」
Aさん 「今まで色々とありがとうございました」
私 「いえいえ。こちらこそお世話になりました。裁判所からの免責決定は当事務所に届きますので、その際はお知らせします」
Aさん 「わかりました。では、失礼します」
Aさんは借入れに多少原因があり、正直、管財人事件になってもおかしくなかった案件でした。
それだけに、無事に免責が認められることになり、私もほっと一安心です。
ここ数年は利息制限法の引き直しにより、債務が大幅に圧縮できるようになったので、自己破産や個人再生よりも任意整理や過払い請求の依頼が多かったです。
しかし、これからは金融恐慌などの影響で自己破産などの依頼が増えてくることが予想されます。
すでに最近の株の暴落で損失を被った方からの相談も増えています。
返済不能に陥っているのであれば、無理な自転車操業をする前に早めに司法書士や弁護士にご相談を。
次は、うつ病を患っている方のケースです。
Aさんは10年以上前からうつ病で買い物依存症で、それが原因で多重債務に陥り、特に過払い金もなく、現在は無職ということなので自己破産を選択することになりました。
破産申し立ても無事終わり、先日は当職も同行して裁判官との面接がありました。
正直、裁判官の質問にきちんと答えられるかどうか不安でした。
裁判官 「借金が増えた理由は?」
Aさん 「前夫との離婚を機に精神的に参ってしまい、仕事を辞めることになりました」
「家でじっとしているのが辛くて、つい買い物をしてしまったり・・・あとはマルチ商法にも手を出して結局、損をしてしまいました」
裁判官 「今でも買い物はしているの?」
Aさん 「今はしていません」
~ 中略 ~
裁判官 「仕事も続かないようだけど、これからどうやって生活していく気?」
Aさん 「何とか仕事を見つけて頑張っていきたいと思います」
裁判官 「そうですか。では、今日はこれで終わりにします」
いまいち文章だとうまく伝わらないのですが、この裁判官が年配の女性の方で結構、言い方がきついのです。
Aさんはうつ病のせいか、非常に緊張しやすいので見ている私がハラハラものでした。
ただ、これでおそらく免責までいくと思いますのでほっと一安心です。
あとはAさんの病気が治り、一日も早く社会復帰できればいうことないのですが・・・。