過払い金というのは払い過ぎた利息のことです。
では、なぜ、利息を払い過ぎてしまったのかというとグレーゾーン金利が原因です。
グレーゾーン金利というのは利息制限法を超える金利のことです。
本来は、利息制限法が上限であるにもかかわらず、みなし弁済という制度のために、利息制限法を超える金利が認められました。
しかし、利息制限法を超える金利であるため、みなし弁済が認められるには厳しい要件が規定されましたが、多くの貸金業者はきちんと要件を満たしていないにもかかわらず、高金利での貸付けをおこなってきました。
その後、みなし弁済の成立をめぐっては、各地の裁判所で争われてきたのですが、ついに平成18年の最高裁判決で、みなし弁済が認められることが事実上ないことが決まりました。
そもそも、利息制限法を超える金利での貸付けを認めるみなし弁済自体に無理があったと思われますが、当時は、本来は厳格な要件が課せられているにもかかわらず、制度があることをいいことに、多くの貸金業者が高金利での貸付けをおこなってきたのが実態です。
しかし、平成18年の最高裁判決により、みなし弁済が認められることがなくなったので、過去に払い過ぎた利息を返してもらう過払い金返還請求が全国各地で起きるようになり、現在に至るわけです。
なお、過払い請求のピークは2~3年ほど前で、近年は件数が激減しており、今後も請求自体は減少の一途をたどると思われます。
とはいえ、いまだ過払い金の存在に気付かずにいる方もいることは間違いなく、過払い金で住宅ローンの延滞を回収できる可能性があることも事実です。
なぜなら、住宅ローンの滞納を回避するために、高金利の借入れを長年していたようなケースでは、過払い金を回収することで、住宅ローンの延滞金を払える場合もあるからです。
よって、過去に高金利の借入れをしていた方、現在も金利が高い借入れを続けている方は、過払い金の有無を疑った方がよいでしょう。
以下は過払い金が発生しなかったレアケースの話です。
先日、債務整理の相談で来所されたAさん。
話を聞くと5社から200万円の借入れ。
その中に10年くらい前から借入をしている会社あり。
会社名はアコム。
10年も取引があれば、利息制限法で引き直しをすればおそらく過払いになっているはず・・・。
私 「アコムは取引が長いので過払いになっているかもしれませんよ」
Aさん 「そのアコムなんですが、実は私自身が昔、アコムで働いておりまして・・・」
私 「そうなんですか」
Aさん 「それで、社員特典のようなものだと思うんですけど、元々の金利が15%で借りたんですよ」
私 「そうすると利息制限法内の金利なので過払いにはなりませんね」
Aさん 「残念です」
会社勤めをしていると、会社によって様々な社員割引がありますが、消費者金融に勤めている社員の特典は「低金利での借入れ」だったようです。
アコムからの借り入れであれば通常、金利は20%後半なのですが、Aさんは社員割引のおかげで15%で借りられたのでしょう(これでも銀行金利に比べれば相当高いといえますが)。
日々、債務整理の相談を受けていると、稀にAさんのように債務者自身がサラ金や信販会社に勤めているケースに出くわすことがあります。
なお、大手消費者金融は訴訟をしないと支払い日までの利息を加算した過払い金を返還してくれない会社がほとんどなので当事務所では大半は提訴しています。
そこで、今日は提訴してから、被告である消費者金融から和解の打診があるまでのおおよの期間をお知らせしたいと思います。
①武富士⇒第1回目の期日の前日(最近は夕方に来ることが多い)
②アイフル⇒第1回目の期日の1週間前から2~3日前
③プロミス⇒同上
④CFJ⇒第1回目の期日の1週間~2週間前
⑤GE⇒提訴後すぐ(第1回目の期日の3~4週間前)
⑥アコム⇒同上
武富士は、ほぼ必ずといっていいほど前日です。
その他の5社はケースバイケースですが、アイフル、プロミス、CFJは第1回目の期日の1週間くらい前に和解の打診があることが多いです。
一番早いのはGEとアコムでしょうか。
この2社はたいてい提訴後すぐに連絡があります。
ただし、アコムは関東と関西で対応する部署が違い、関東は上記のとおり早いのですが、関西の部署はもっと遅いと思います。
また、簡裁案件か地裁案件かによっても対応は異なります。
なお、信販系はだいたい各社とも第1回目の期日の1週間前くらいが多いです。
いずれにしましても、和解時期は最終的にはケースバイケースなので、一つの参考にして頂ければと思います。
なお、過去に完済をしている借金でも、過払い金の時効は完済から10年なので、時効の期間内であれば請求が可能です。
以下はその実例の紹介です。
すでに完済したサラ金に対する過払い請求の依頼を受けているAさんの旦那さんのBさんから連絡がありました。
Bさん 「家内の件ではお世話になっております」
私 「いえ、とんでもないです」
Bさん 「実は・・・私も5年ほど前に完済したものがありまして・・・」
私 「そうなんですか。では、奥様と同様に過払い請求しますか?」
Bさん 「はい。今日はそれをお願いしようと思いまして」
私 「借入れをしていたのはどこですか?」
Bさん 「プロミス、CFJ、キャスコの3社です」
私 「キャスコですか・・・ここは経営状態が悪くて、いつ倒産するかも分からないんですよ」
Bさん 「本当ですか?」
私 「ええ。なので、キャスコに関しては過払い金を回収できるかどうか分かりませんが、それでもよろしいでしょうか?」
Bさん 「はい。そういうことなら構いません」
私 「では、できる限りやってみます」
昔、完済したところから今になってお金を回収できる・・・。
一般の方にとっては信じられないような話なのかもしれません。
Bさんも奥さんが現実に回収したのを目の当たりにして連絡をくれたのでしょう。
まだまだ、周りにはBさんのように過去に借入れをしていたサラ金から過払い金を回収できることに半信半疑の方も多いのではないかと思います。